マクベス


シェークスピア作『マクベス』より

11世紀のスコットランド。殺人と陰謀によって権力への渇望と野心を満たしたマクベスの物語。自分ではどうにもならない力によって翻弄されていく彼の運命。それは、運命の鍵を握る3人の魔女たちのよって象徴される。

物語は、「万歳、いずれ王になるお方!」という予言をマクベスにもたらす3人の魔女の登場から始まる。有望な未来の予言に意気得た彼は、自らの煮え切らない性格も克服し、ダンカン王暗殺を計画。マクベス夫人は、それを実行するよう嗾ける。犯罪の悪循環の中、魔女の予言の証人でもある友人バンクォーを抹消暗殺するに及ぶ。のち再び現れた魔女のマクベスの期待を裏切る啓示により、その運命の転落が早まることとなる。マクベスは、暗殺した者の亡霊に取り憑かれ、マクベス夫人は、狂気のうちに死ぬ。
その背信行為を罰して、王位を取り戻す決意をしたマクダフと前王の息子マルカムとの戦いが始まる。「バーナムの森が動き」「母の腹を破って生まれた」マクダフとの戦いにマクベスは破れる。

幽霊と魔女の予言に取り付かれたマクベスの物語は、まるで悪夢のごとし…
演出により、夢幻的世界−非現実的、不気味な雰囲気を作り上げるために、演技の様式化、視覚的効果といった歌舞伎的要素を取り入れる。

ちょうど、シェークスピアがマクベスを着筆するころ、日本では、それまでになかった舞台芸術がある女性の手よって生まれた。その女性の名は、出雲阿国。舞台に上がるのは男性のみであったその時代に、彼女の踊りは、観衆を唖然とさせ、「異様な風体」、「常識はずれ」という意味の「かぶく(傾く)」だと批判された。これが後の歌舞伎となる。阿国の大胆さに影響され、そのほとんどが男性であるマクベスの登場人物を、この舞台では全て女性が演じる。

演出/振り付け:岡田小夜里